「2024年問題」がここに:時間外労働の上限規制がもたらす、日本のデリバリー事情の変化

April 25 2024

ようやく暖かくなり、春の新芽が芽吹き始めた日本。2024年4月より、働き方改革関連法が施行されました。

先に書いた通り、このいわゆる「2024年問題」は、新たな時間外労働の上限規制が導入されるなど、日本の物流・運送業界にかつてない影響を与えることが予想されます。

影響を受けるのはSVLのような物流企業で、トラックドライバーに課された時間外労働の上限規制により、労働時間は年間960時間、月80時間までと制限されます。これは、日本国内の配送ネットワークに大きな混乱をもたらす可能性があり、配送需要を満たすために、今後より多くのドライバーを雇用する必要があります。

このような時間の上限規制は、長距離の配送により影響するため、遠くへ送られる貨物は、目的地に到着するまでに今まで以上の時間がかかるか、さらに多くの人員に頼ることになります。その結果、必然的にコストが上昇し、それが消費者に転嫁されるとしても、最終的にはサービス自体へも重大な影響が及ぶ可能性があるのです。

SVLと働き方改革関連法

私たちは、この法律が日本の労働力に好影響をもたらすことを考えれば、よろこんで受け入れるべきだと考えています。ドライバーの福利厚生、家庭を優先できるようになることは、モチベーションが高く忠実で生産性の高いドライバーにとって不可欠であり、こういった満足度の高いドライバーが顧客とのより良い交流につながり、それが私たちのビジネスの評判と成長に繋がることを私たちは知っています。

日経アジアが報じたように、トラックドライバーのカジヤマトシヤ氏は、この改革が、長時間労働と低賃金で知られるこの業界で、既存のドライバーの離職を食い止めるための明るい兆しになるかもしれないと概説しています。

一般的に、この業界のトラックドライバーたちは自分たちの仕事(特にスカニア・シリーズのような素晴らしいトラックを運転する場合)に誇りと愛をもっていますが、リスクがあることも事実です。この法改正によってもっと安全を確保し、燃え尽き症候群や交通安全などのリスクを恐れずに働けるようになるべきなのです。

私たちはまた、この改革がもたらす経済的な挑戦にも期待しています。それは競合他社よりも価格上昇に対抗できると自信をもっているからです。同時に、他の市場関係者が苦戦を強いられている今、私たちはカーボン・オフセットとその他の環境公害への取組(詳細は近日中に!)を順調に進めています。

とはいえ、知っての通り少子化の進む日本で魔法のように一夜でドライバーを増やすことはできません。まず賃金を引き上げ、女性の従業員にとっても魅力的な業界にすることが人員確保の一助になるのは確かですが、同時に政府は外国人労働者がもうひとつの解決策になることも期待しています。

共同通信の報道によれば、国土交通省は外国人在留資格の特定技能制度に「自動車運送業」を追加しました。

これにより外国人労働者は国土交通省が認定した企業で、バス、タクシー、トラックの運転ができるようになります。運転手には、乗客や顧客とのコミュニケーションが要求されることから、最低でもN3レベルの日本語能力が必須で求められることになります。

しかしながら実際に、学位と日本で有効なトラック運転免許と高い日本語能力を有する海外からの労働者が存在するかどうかは疑問がのこります。

2027年までに24万人ものドライバー不足を満たす必要性を考慮すると、もっと違ったアプローチが必要なのではないでしょうか。

画像提供: Aleksandar Malivuk / Shutterstock

もし供給量を増やすことが「2024年問題」を解決するひとつの方法だとすれば、需要は効率化によってよりよく管理することもできます。岸田首相は、トラックや倉庫への貨物の出し入れをより自動化する必要性を述べており、今年の初めには、高速道路や制限速度の引き上げを活用した専用インフラの計画や、鉄道や船のような代替オプションの可能性を提起しました。

JRは既に新幹線を使った貨物輸送を試みていますが、それだけではありません。秋田県のトラック協会が行ったテストでは、商品を運ぶパレットを全面的に変更したり、野菜や果物の集荷と輸送を分けたり、集荷拠点を活用したりすることで、1日平均~3時間もの節約につながることがわかりました

安定したガス価格に大きく依存する業界にとって、徹底的に効率化を図ることが必須であることは間違いありません。ドライバーの給与はすでに上昇する見込みであり、さらなるエネルギー価格の上昇という二重の影響が、業界をさらに圧迫するかもしれません。

物流業界もAmazonのような大手eコマースとともに、再配達の削減にもっと取り組む必要があります。近い将来、消費者がより不便な状況を受け入れなければいけなくなるであろう事は避けられないでしょうし、社会全体として今、オンデマンド・デリバリー・サービスの必要性やアプローチを見直す時期に来ているのかもしれません。