1ドル200円、起こりうる影響とは?

7月 26日 2024

2024年を通して円の対ドルでの下落が続いていますが、もし円が1ドル200円に達したら市場はどうなるのでしょうか?日本に拠点をおく物流企業である私たちは、「2024年問題」によるエネルギーや人件費の課題に直面しており、今後の市場動向に強い関心を持っています。

表面的には、通貨の弱さは、一般消費者が為替レートを日常的に扱うのと同じように理解されやすいかもしれません。例を挙げるなら海外旅行の時です。日本では多くの人々が、海外旅行がこれまで以上に高くなり、手が届かないほどの贅沢になってしまったことを実感し、為替レートの影響を強く感じることでしょう。その一方で、インバウンド旅行ブームが起きている事に多くの人が気づいているはずです。これは、同じコインの表裏の関係で、2023年初頭の為替レート(約130円:1ドル)と比較して、現在の円は約25%も弱く(約160円:1ドル)、その影響は顕著です。

Google Finance: 5Y chart for USD to JPY (y-axis)

企業にとって、その影響はより深刻です。安価な日本製品に魅力を感じた米国の輸入業者からの需要増加に応じて、日本の輸出業者が生産を拡大したため、株式市場のパフォーマンスは一見好調に見えるかもしれません。しかし、為替レートの影響を考慮すると、この成長はそれほど顕著ではなく、むしろ微々たるものです。そもそも日本の輸入収支は決して楽観的な状況ではありません。

厳しい現実として、日本は輸入コストの増加に直面し続けています。島国である日本は、あらゆる物資の純輸入国であり、対価を円で支払わなければなりません。バナナから牛肉に至るまで、あらゆる業種で事業コストが上昇する可能性があります。さらに、輸入品目には原油も含まれています。輸出品の生産増加に対応するため、日本はより多くの原油を必要としているのです。

エネルギー価格の上昇だけを見ても、政府は補助金による相殺効果が経済を刺激し、インフレを安定させることを期待しています。

安定したエネルギー価格が無いままでは、生産コストが上昇し、消費者価格の引き上げにつながります。消費者はすでに賃金の停滞と直面しており、さらなる負担を強いられる事になります。すべての企業がコスト増の影響に耐えられるわけではなく、競争力を維持できない、あるいはコストを消費者に転嫁できない企業は、倒産に追い込まれる可能性があります。燃料が主要コストとなる物流業界において、企業はそもそも「2024年問題」の規制による労働コストの影響に対応しようとしており、事業運営はすでに厳しい環境に直面しているのです。

補助金はさまざまな手段で賄うことができますが、通貨の安定を損ねるリスクがあるため、貨幣の印刷量増加に依存することは避けるべきです(通貨供給量の増加に伴ってインフレが起こる場合、金利引き下げの影響を抑えるために円建て資産が売却される可能性があります)。通貨の下落を防ぐため、政府は日本円を買い入れることで市場介入することができます。最近では円の需要を高めるために3.5兆円規模の買い入れを行いました。

もし日本円がさらに下落し、1ドル200円という不吉な水準に近づく場合、上述の影響はさらに深刻化するでしょう。政府や中央銀行の財政は圧迫され、需要喚起の対策も現在より制限される可能性があります。

物流業界では、商品流通のネットフローに徐々に変化が見られ、それに伴いビジネスの勝ち組の顔ぶれも変わる可能性があります。日本からの海外輸送の需要が増加することで、その需要を満たすための物流サプライヤーが必要とされるでしょう。以前は安価だった輸入品(例えば米国産牛肉)が、国内産の代替品と比べて競争力を失うことで、国内産製品へのシフトが見られるかもしれません。円安、そして輸入への依存が強い中で、日本の自給自足率の重要性が再び政治の焦点となるかもしれません。原子力エネルギー政策から労働力の人口動態に至るまで、日本の将来にとって、全てが関連性を持つ重要な課題となるでしょう。